電撃トレードで注目集める若き大砲
2025年5月、プロ野球界に大きな話題を呼んだのが、福岡ソフトバンクホークスから読売ジャイアンツへと電撃トレードで移籍した内野手・リチャード(砂川リチャード)だ。25歳の若き大砲候補は、これまで二軍では圧倒的な長打力を見せつけながらも、一軍の舞台ではなかなかブレイクのきっかけをつかめずにいた。しかし、今回の移籍が彼の野球人生に新たな光をもたらすかもしれない。
沖縄からプロ野球へ リチャードの歩み
リチャードは沖縄県出身。父がアメリカ人、母が日本人というルーツを持ち、沖縄尚学高校から2017年の育成ドラフト3位でソフトバンクに入団した。身長189cm・体重118kgという恵まれた体格と、右打者らしい豪快なスイングが最大の武器だ。プロ入り後は主に三軍・二軍で経験を積み、2019年オフには台湾ウインターリーグで活躍。2020年には春季キャンプで一軍A組に抜擢され、同年3月に支配下登録を勝ち取った。
ファームでの圧倒的実績と一軍での壁
特筆すべきは、ファーム(ウエスタン・リーグ)での圧倒的な成績だ。2020年から2024年まで5年連続で本塁打王に輝き、ファーム通算本塁打は94本に到達。2021年にはプロ初本塁打が逆転満塁弾という劇的な一発で、その年は約1カ月で7本塁打を固め打ちした。しかし、一軍では壁にぶつかる。2022年までに通算10本塁打を記録したものの、2023、2024年と2年連続で一軍本塁打ゼロに終わり、昇格と降格を繰り返す日々が続いた。
新天地・巨人での鮮烈デビュー
そんなリチャードに転機が訪れたのは、2025年5月12日。巨人の秋広優人、大江竜聖との2対1トレードが成立し、リチャードは新天地・読売ジャイアンツへと移籍することが発表された。移籍発表翌日の13日、広島戦(マツダスタジアム)で「7番・三塁」で即スタメン出場。第2打席で移籍後初安打となる今季1号ソロを放ち、2022年以来3年ぶりとなるプロ通算11号を記録した。この一発は、ファンや関係者に大きな衝撃と歓喜をもたらし、SNSでも「リチャードホームラン」がトレンド入りするほどの反響を呼んだ。
心機一転、巨人での新たな挑戦
リチャード自身も「これまでは1打席目の三振を引きずっていたが、みんなの『切り替えて』という言葉が素直に入ってきた。フレッシュな気持ちで打席に入ることができた」と語り、心機一転のスタートを実感している。巨人では主砲・岡本和真が負傷離脱中であり、一塁・三塁を守れるリチャードには「岡本の穴を埋める存在」として大きな期待がかかる。
ソフトバンクでの恩と新たな決意
ソフトバンク時代には、王貞治会長や小久保監督、山川穂高といった大物からも期待をかけられ、何度も助言や指導を受けてきたリチャード。しかし「それに応えられないままなのが心残り」と語りつつ、「これからジャイアンツで成長する姿を見せて恩返しをしたい」と新たな決意を口にしている。
“帝王”から一軍の主役へ リチャードのこれから
二軍では「帝王」と呼ばれるほどの実績を誇るリチャードだが、一軍でその才能を完全開花させることができるか。豪快な長打力と新天地での覚悟を胸に、リチャードの挑戦が再び始まった。巨人での大ブレイクに期待が高まる。